あとがき
ドイツへの想いは、ここシンガポールで生活していても変わることはない。それは、崇高で思索に満ちたドイツ思想や哲学とその、ある意味で悲劇的である近代史のギャップに、人生そのものの矛盾とそれ故の大きな希望を感じるからである。21世紀のドイツは、政治的にはとりあえずナチスの悲劇という20世紀の遺産を、欧州統合の枠組みの中で何とか消化するのに成功しているように思えるが、歴史は常に忘れた頃に繰り返されることになる。しかも、「一度目は悲劇として、そして2度目は喜劇として。」私が生きている時間の中でこれが起こるかどうかは分からないが、そうした緊張を秘めたドイツとその文化を、引続き追いかけていこうと思う。
2009年9月 記