ドイツの女性はヒールを履かない
著者:サンドラ・ヘフェリン
前著と同様、関係しているNPO主催の4月の講演会で話を聞く機会があった女性エッセイストによる2023年7月出版の著作で、著者からNPOに寄贈されたものである。偶々小生の元に郵送されたことから、メンバーに渡す前に眼を通すことになった。著者は、父親がドイツ人、母親が日本人。23歳まではミュンヘンで育ち、その後来日し、現在は日本滞在が25年と、ドイツ時代よりも少し長くなったという。日独のバイリンガルで、当日の講演も、全く訛りのない日本語で話が進められた。
講演会は、「他者を助けたい気持ちはどこから?―難民を受け入れるドイツのボランティア精神から考える」という主題で、21世紀に入ってからのシリアやアフリカからの難民に加え、足元はウクライナ戦争から逃れてきた人々を一般家庭が受け入れるというドイツ人の精神性を論じた、やや「重たい」ものであったが、この著作はもっと気楽な作品で、日独の、特に女性の日常生活を通じた感覚の相違などを軽いタッチでコメントしており、簡単に流し読むことができる。その分野は、本のタイトルから示される通り、女性の靴の選択理由が、散歩好きのドイツ人とファッション性を重視する日本人で違っている、という話から始まり、休日の過ごし方や友人との付き合い方、あるいは化粧、結婚観、家事への姿勢、教育システム、そして恋愛観といったものの違い等と続くことになる。その多くは、私も駐在時に感じた気持ちと共通する部分と、そうは言っても最近の日本は随分変わっているよね、と思えるところが混在している。ただそれらについて細かく議論する必要もない、気楽な世間話、といったところである。それでも、他人を意識せず、自分なりの価値観に自信を持って、それに従って生きていくのが人生を楽しむ秘訣であるという著者の基本的姿勢は十分納得できる。酷暑の続く、予定のない週末の、気楽な暇潰しであった。
読了:2023年7月23日