三文オペラ
著者:ベルトルト・ブレヒト
英国17世紀の劇作家.J.ゲイの「乞食のオペラ」をブレヒトが改作した脚本である。プレヒトについては、ワイマ−ル期の文化革新の中で、表現主義やフォ−マリズムの影響下登場した、異化効果をその劇作の中心に据えたプロレタリア−ト文学/演劇の巨匠、という教科書的な理解はしていたものの、実際の演劇を見たこともなければ、脚本に接したこともなかった。
ドイツ生活も終りにさしかかり、日本を発つ際に購入した書物の処理もあり、今回初めてその脚本に接した訳だが、確かに、登場人物の設定や、彼らの世界の描き方に、旧来のブルショワ演劇にはない試みを感じつつも、残念ながら、当方の想像力の枯渇のせいもあり、今一つその文化的斬新さを感ずることができなかった。ブレヒトの作品の中でもこの「三文オペラ」は作曲をK.ワイルが担当したことで、ワイマ−ル期を代表する評価を勝ち得たものであるが、私の想像力を限界付けたのは、このように音楽と一体化された作品を文学の世界だけで評価せざるを得なかった点が大きかったのではないか。その意味で、少なくとも令回は、盗賊首領のマクヒスが、ロンドン警視庁長官とつるんで義賊的犯罪を犯した後逮捕され、処刑寸前までいくが、急転直下恩赦が下り、更に爵位まで受ける(何故?)、という概ねのスト−リ−を把握した以上の評価はやりようがない。日本でのプレヒト紹介に一役かっだ千田是也による翻訳・解説ではあったが、どうせなら、この作品は演劇空間で経験した際に改めて個人的評価を行うことにしよう。
読了:1997年12月21日