アジア・ドイツ読書日誌と
ロンドン・東京・フランクフルト・シンガポール音楽日誌
ロンドン・東京・フランクフルト・シンガポール音楽日記
第三部:ドイツ音楽日誌 (1991−1998年)
ブライアン・アダムス  ’Night to Remember’ Concert
日時:1997年4月23日
場所:Festhalle 
 久々のロック・コンサ−トである。カナダのロッカ−、Bryan Adamsは、Bon Jovi等と同様、夏のオ−プンエア−・コンサ−トに持ってこいのア−チストで、実際この夏には別にフランクフルト近郊マンハイムでのオ−プンエア−ヘの参加も決まっているが、今回は5年振りの新作である「18 till i die」のためのワ−ルドツア−として一足先に行われたFesthalleでのコンサ−トに気分転換も兼ね行ってみた。当日は心地好い春の宵であったが、会社から車で移動したのが災いし、徒歩20分程度の距離を、大渋滞の中、50分かけて移動するはめになり、その結果、8時丁度に始まったコンサ−トの最初の20分を逃し、同行する予定であった会社の同僚ともはぐれることになってしまった。

 こうして遅れて到着した私が、立ち見のアリ−ナの、ステ−ジに向かい左側に居場所を見つけた時には、コンサ−トは既に佳境に入っていた。ブライアンを中心に、リ−ドギタ−、ベ−ス、ドラム、キ−ボ−ドで構成されるシンプルなバンドが、聞き慣れたヒット曲を次々に演奏していく。アップテンポの曲ではブライアンは目まぐるしく動き回り、左側のマイクを使う際は、私の場所から至近距離に入るが、中央マイクを含め、それ以外の時は余り表情をつかむことはできない。いつもながら、スタンディングのコンサ−トでは大きなドイツ人たちがめぐらったい。おまけに私の位置では、アップテンポのハ−ドなナンバ−になるとブライアンのボ−カルがやや聞きにくい状態であったが、他方スロバラ−ドになると、彼の特徴あるハスキ−ボイスを十分楽しむことができる。私は、最近の2作をフランクフルトに来てから買いこんだだけで、決して彼の熱心なリスナーではないことから、演奏される曲も、この2作からのものを除くと、どこかで耳にはしているが、曲名と結びつかない、ということが多い。しかし、はやりのロッカ−というだけあって、どの曲にもそれなりに記憶に残るフレズや特徴をもっている。前作である’Waking Up The Neighbours’からは、アップテンポの’Can’t Stop This Things We Started’(但しスタジオよりもややテンポを落としていた)や’Not Guilty’’There Will Never Be Another Tonight’、ミディアムテンポの’Thought I’d Died And Gone To Heaven’、バラ−ドの’(Everything I Do ) I Do It For You’(先日テレビで同じカナダ出身のCeline Dionとデュオで歌っていたのが印象的であった)等が、そして新作からは今回のツア−タイトルともなっている’Let’s Take A Night To Remember’、’You’re Still Beautiful To Me’、’Have You Ever Loved A Woman?’等が、曲とタイトルが一致した作品である。アップテンポの曲がワンパタ−ンであるのに対し、やはりバラ−ドがより聞き応えがある。特にスタジオ録音でPaco De Luciaが伴奏した’Have You Ever Loved A Woman?’は、この程度の伴奏であればPacoが弾いても、プライアンのバンドのギタリストが弾いても大差ないこともあり、Pacoが弾いているかのような想像を楽しむことができたのであった。

 1時間半程、正面ステ−ジでの演奏が続いた後、全員が引っ込んだため、早くもアンコ−ルかと思っていたところ、アリ−ナ中央部から再び5人のメンバ−が登場し、全員が辛うじて乗れる程度の狭いスペ−スで再び演奏が開始された。ここで面白かったのはTroggsの’Wild Thing’や、Beatlesもカバ−したロックンロ−ルのトラッド’Money’等、彼が影響を受けたと思われる60年代のカバ−曲中心の、パ−ティ−ロック大会が盛り上がったことである。正面ステ−ジでも、二階席の女性一人をステ−ジに呼び寄せていたが、ここでもまずは結構目立つ、ブロンドの女性を狭いステ−ジに呼び込み、横で踊らせていたが、次第に興が高じてくると男女かまわずステ−ジに引き上げ、最後はバンドのメンバ−が見えない位混み合う状態の中での演奏となったのである。’(I Wanna Be)Your Underwear’では正面ステ−ジ左右に下着をつけた巨大な風船が登場するという品のない演出もあったが、彼が演奏するとまあ許せる感じになるのは不思議である。最後は再び正面ステ−ジに戻り、旧作中心のアンコ−ル数曲を演奏し、コンサ−トが終了したのは11時少し前であった。

 基本的に、難しいことを考えずに楽しむア−チストであることから、お祭り気分で盛り上がってスカッとすればそれ以上を期待する必要はないし、また彼もそれを認識し、中盤のパ−ティロックなどは十分にエンタ−テイナ−としてのファンサ−ビスに努めたといえる。しかし、そうしたお祭り気分に浸るためには、一人で黙々とリズムを取っているのはやや寂しいものがある。終演後の駐車場で、料金決済待ちの大行列に再度うんざりし、ホテルのバ−で終演後やっと合流した同僚たちと時間を潰しながら、つくづく車で会場まで移動したことを悔やんだ一夜であった。