ロンドン・東京・フランクフルト・シンガポール音楽日記
JEFF BECK 東京公演
日時:2005年7月5日 場所:国際フォ−ラム
ティ−ンエ−ジャ−の時に出会いながら、たまたま50歳を越えるこの時期までライブに接することが出来なかったミュ−ジシャンも多いが、ジェフ・ベックはそうした一人である。ロンドン時代を振り返ってみると、Wired等の旧盤を何枚か購入し、彼の音には接していたものの、丁度彼がアルバムの発表で見ても1976年の「Wired」と翌年の「Live Wire」から1980年の「Then And Back」、1985年の「Flash」、1989年の「Guitar Shop」と略4年に1作と既に寡作の領域に入っており、その中で滞在時の新作である「Then And Back」も、その時に公演の話を捉えられなかったことから、ライブに接する機会はなかった。また私が持っている彼の唯一の映像は、1983年のR.ウッド救済コンサ−トで、E.クラプトン、J.ペイジらと競演した「ア−ムズ・コンサ−ト」であるが、5曲のみ、またその一部は、余り聞きたくない彼のボ−カル物ということで、必ずしも彼の全貌を伝えるものではなかった。こうして、今回の日本公演は、実質初めての彼との接触となったのである。
非公式サイトによると、今回の来日メンバ−は、ドラムスにVinnie Colaiuta、ベ−スが Pino Palladino、キ−ボ−ド Jason Rebello、ボ−カル Jimmy Hall という5月初旬に正式決定したという布陣。当該サイトによると当初Jan Hammer が参加する予定であったが、急遽病気でキャンセルになったとのこと。本当であったとすると残念な話ではある。
当日の国際フォ−ラムはシンプルなセッティングで行われた。正面むかって左に中型アンプが6台重ねられ、その横にドラムセット、その横に若干のベ−ス/キ−ボ−ド用アンプがあり、右正面に簡単なキ−ボ−ド。それ以外は、モニタ−スピ−カ−数台と、ボ−カル要マイク1本のみ。実際、ジェフはアンプの前の広いスペ−スを縦横に使うことになるが、ベ−スはほとんどアンプ前から動かず、セッティングだけ見れば、昔の学園文化祭での素人バンドの演奏会に来たかのような感覚であった。
さて、演奏は略定刻に開始され、1時間の前半が終了したところで、5分の休憩を挟み後半約45分、そしてアンコ−ル2回という進行で行われた。曲目については、インストゥルメンタルが多いことから、どこかで聞いたことはあるが曲名は特定できない物が多かったが、凡そ、以下の通りである。
演奏曲目
@Beck’s Bolero (Truth, 1968)
Aunknown
Bunknown
Cunknown スロ−バラ−ド
DRollin’ and Tamblin’ ボ−カル
EMorning Dew (Truth, 1968) ボ−カル
Funknown スロ−
Gunknown ミディアム
Hunknown スロ−→アップテンポ
(5分休憩)
Iunknown 30秒程度の早弾き
Jスロ−
KPlay With Me (Wired, 1976)
Lスロ−
MHey Joe ボ−カル
Nunknown ボ−カル
Oスロ−ブル−ス
PSophie (Wired, 1976)
(アンコ−ル)
QPeople Get Ready (Flash, 1989) スタジオ録音はボ−カル、ロッド・スチュア−ト
RGoin’ Down 女ギタリスト ボ−カル ジェニファ−?
(アンコ−ル・No2)
SOver The Rainbow ピアノデュオ
黒のタンクトップにジ−ンズという、それこそデビュ−時を変わらないいでたちで、ベ−ジュのストラト一本を抱えて登場したジェフは、オ−プニングの古典から始まり、ほとんどMCもなく、淡々と進めていく。彼のギタ−は、決してとんでもない早弾きがある訳ではないが、いかにもこれ一本で生きてきたといった風な職人的趣が魅力である。アップテンポの曲で、キ−ボ−ドと掛け合いをやるが、ヤン・ハマ−とのそれに較べれば緊張感が足らず、またドラムはややドタバタで、彼との競演者に必要な繊細さは余り感じられない。そして何よりも、ボ−カルは新聞で渋谷陽一が「やたら歌の上手い楽器屋のオヤジ」と評したとおり、R.スチュア−トがオリジナルで歌っている曲をカバ−するには力不足であるが、ジェフのギタ−がある、ということで全て許してしまえる。スロ−で聴かせる、澄んだ音から、ファズで歪ませた音まで、ストラトで出す音は多彩であり、結局、最後までギタ−はこの一本だけで通したのも、一方でS.ハウのように、とっかえひっかえギタ−コレクションを出してくるのに慣れた我々にとってはむしろ新鮮に思えるから不思議である。
こうして約2時間のコンサ−トは、前述の通り、学園祭ライブのような雰囲気のまま終了した。アンコ−ルNo1で、サイドギタ−で登場した女性は、兼ねてからパ−トナ−となっているジェニファ−か。そしてアンコ−ルNo.2は、E.クラプトンを意識したものなのか?
といったことで、今回は、頭で聞いたというよりも、感覚で聴いたコンサ−トであった。それにしても、ジェフ・ベックという男は、ギタ−を弾いている以外の情報がない男だ、ということを痛感した。
2005年7月17日 記