ロンドン・東京・フランクフルト・シンガポール音楽日記
ASIA Heat of the Moment Japan tour 2025
日付:2025年4月19日 会場:Billboard 東京
個人的には、1982年10月、ロンドンでのデビュー・ライブ(別掲)、1990年9月の日本公演(別掲)に続く3回目のライブである。しかし、2017年に逝去したJ.ウエットンはもちろん、まだ存命であるS.ハウやC.パーマーもいない。残っているオリジナル・メンバーは、キーボードのG.ダウンズ(以降「ジェフ」)だけで、言わば彼がその他メンバーを集めた、(オリジナル・メンバーの第一期、J.ウエットンが抜けてJ.ペインがリード・ボーカルをとった第二期、そして若干のメンバーの入り繰りはあるが、オリジナル・メンバーが再結集した第三期に続く)第四期ASIAである。公演に先立ちこのメンバーでのリハーサル映像がネットにあったが、やはりJ.ウエットンのボーカルが、新しいメンバーでどのように聴こえるだろうか、というのが最大の関心であった。
会場は六本木ミッドタウンにあるビルボード東京。私は初めて行く場所であることから、ミッドタウンに入ってから迷いまくったが、同行の友人による電話ガイドで何とか開演時間5時半の30分前には辿り着いた。会場に入ると、そこは確かに予約時に気がついていたテーブル席であるが、実際に着席すると、ステージに向かい一番右の隅で、ステージまでの距離はそれほど遠くないが、演奏はやや見づらい。次回ここに来る機会があれば、やや距離はあってもステージを正面から望める2階席の方が良いな、と思いながら開演を待った。
5時半、予定通りメンバー4人がステージに現れる。ステージに向かって左から、ギター、ドラム、ボーカル、そして我々に一番近い位置にジェフという布陣である。彼らの第二作のオープニングであるThe Heat Goes Onで演奏が開始される。当日の演奏曲は以下の通りである。
@ The Heat Goes On(ALPHA,1983)
A Days Like These (Gold, 2005)
B Midnight Sun (ALPHA,1983)
C Heat of the Moment (ASIA,1982)
D Only Time Will Tell (ASIA,1982)
E Sole Survivor (ASIA,1982)
F One Step Closer (ASIA,1982)
G Time Again (ASIA,1982)
H Wildest Dream (ASIA,1982)
I Without You (ASIA,1982)
J Cutting It Fine (ASIA,1982)
K Here Comes The Feeling (ASIA,1982)
(アンコール)
L Go (ASTRA,1983)
M Video Killed The Radio Star (The Buggles, 1979)
オープニングの@で盛り上がった後、やや意外であるがオリジナル・アルバムには収められていない、地味なA、そして1982年のデビュー公演で、また当時は発表されていない「2ndから」と紹介されて聞いたバラードのBと続く。課題のボーカルは、声は出ているが、やはりオリジナルのJ.ウエットンと比較してしまうのはしょうがない。ジェフのキーボードは、あまり目立たない感じであるが、ギターはなかなかで、ドラムはきちんとサポートしている。
そしてデビューアルバムの代表曲であるCに続き、このアルバムからの各曲が披露される。アップテンポとバラードが交互に繰り返され、彼らの初期の楽曲の素晴らしさを堪能できる構成である。帰宅後、彼らのCDを聴き直したのであるが、当日このアルバムの全曲を演奏したことは、その場でも認識していたが、順序まで同じだったことが分かった。今回のツアーの眼玉ということであろう。
後半、メンバー紹介が行われたところで、ギターがJ.Mitchelと紹介された。彼は、私が持っているJ.ウエットンのソロDVD(2003年、ポーランド・クラコフ公演)で素晴らしいギターを披露している。それまで、外見やギターのフレージングが似ているので、もしかしたら、と考えていたが、この紹介で確認できた。このDVDは、私が持っているJ.ウエットン関係の映像の中でも、King Crimson時代から、UK,ASIA、そしてソロ時代を含めた彼の履歴的な演奏となっており、最も気に入っているものである。それから20年超の時間を経て、当時も少し丸かったJ.Mitchelであるが、益々丸みは増していたが、ギターテクニックは衰えていなかったのである。因みに当日のメンバーは帰宅後ネットで確認すると以下の通りであった。べース・ボーカルとドラムは今回初めて聞く名前であった。
Geoffrey Downes (Key)
Virgil Donati (Dr)
Harry Whitley (Ba, Vo)
John Mitchell (Gt)
こうして公演は、彼らの代表曲であるKで締め括られる。開演から丁度1時間。そしてアンコールで再び登場するが、「もうほとんどの主要曲はやったので何を持ってくるかな?」等と話していたが、それは3rdアルバムからのこの日唯一の「Go」であった。そして最後は、ジェフのバグルス時代のヒット曲のM。これも、私の持っている映像では、オリジナル・メンバー4人による2007年の東京公演で、J.ウエットンによる拡声器を通したボーカルで披露されているが、この日もボーカルはベースが務めていた。終演は19時45分。因みに、今回は2回のセットになっており、20:30から2回目が予定されていた。
この日の演奏は、繰返しになるが、1st全曲、2nd2曲、3rd 3曲、その他2曲という構成で、考えてみれば、ネットで事前に観た「Open Your Eyes」は演奏されなかった。またオリジナル・メンバーで再結成後の第三期の曲も全くなかった。その意味では、彼らが最も売れた初期の楽曲に徹底的にこだわったという選曲であった。確かに、その方が受けるのであろうが、新しめの楽曲のライブも少しは聴きたかったというのが正直なところであった。ジェフは1952年8月生まれであるので、享年72歳。オリジナル・メンバーの中では最も若く、私と略同年代である。昨年9月に観たYES公演にも参加しており、齢を重ね益々元気であるのは何よりである。次に彼を見るのはこのASIAだろうか、あるいはYESだろうか?そんなことを考えながら家路についたのであった。
2005年4月20日 記