アジア・ドイツ読書日誌と
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映画日誌
ドイツ映画
ヒトラーを欺いた黄色い星
監督:フラウス・レーフレ 
 2017年制作、2018年公開の、ドイツ語による「正真正銘」のドイツ映画。第二次大戦下のドイツ・ベルリンで、ユダヤ人の摘発、収容所への移送とそこでの大虐殺が始まる中、それから逃れ、市内に潜伏したユダヤ人が約7000人、その内約1500人が終戦まで生き延びたという。この映画は、その中の男性二人、女性二人の4人の姿を、実際の彼ら、彼女らの証言を交え描いたものである。原題は、「Die Unsichtbaren=見えない人々」。監督はフラウス・レーフレであるが、俳優陣を含めて、もちろん私は初めて聞く名前ばかりである。

 4人とも、摘発が行われた時期は、10代の終わりという年代。一人の青年は、技能故に運良く収容所送りを免れ、潜伏しながらユダヤ人を救う身分証の偽造を行うが、終戦直前危険を察し、自転車でスイスまで逃亡する(ベルリンから!!!)。もう一人の青年は、隠れ家を転々としながら、反ナチス地下運動にも関わり、最後にゲシュタポに捕らえられるが、終戦でユダヤ人ソ連兵士に救出される。他方、女性の一人は、ユダヤ人の外見を変えるため髪を金髪に染め直しながら、最後は、偶々知り合い出征したドイツ人青年の母親のもとで終戦を迎える。そして最後の女性は、ある時期からナチス将校のメイドとして雇われ、最後は地下の避難豪で生き延びることになる。老境を迎えた彼ら彼女らの証言に、実際の1940年代のベルリンの映像も交えながら、その苦難の青春時代を、それぞれの俳優が演じている。

 映画は、彼らが極限状況の中で、怯えながら過ごし、そして何度も危機に直面しながら、それを乗り越える様子をサスペンス的に描いていくが、彼らが生き延びた、ということが分かっているので、ある意味安心して見ていられる。そして、この映画が語るのは、もちろんナチスのユダヤ人絶滅政策という空前の犯罪であるが、同時にドイツ人の中にも、ユダヤ人を匿うことで、ナチスに静かに抵抗しようとした人々がいたということでもある。こうした趣向の作品は、「白バラ運動」の映画を含め、今までに幾つか観たが、恐らく終戦直後、あるいはその後のドイツ戦後史の中では、ある種のタブーとなっていたのではないか、特にドイツ人がそれを表に出すことは控えられていたのではないかと思うことがある。しかし、戦後70年以上を経て、そして東西ドイツの統合やEU内でのドイツの存在感を反映して、そうしたタブーも相当薄まってきているのであろう。ドイツ人の手によるドイツ語でのユダヤ人救済の物語が、実際に現在のドイツでどのように評価されているのかという興味を感じた作品であった。

鑑賞日:2021年5月26日