大杉探偵事務所 美しき標的
原作:逢坂 剛
逢坂剛原作の百舌シリーズの映像化(別掲)の「スピンオフ」版であるが、百舌シリーズとは異なり、特段逢坂の原作小説はない、映像だけの企画物である。香川照之演じる私立探偵大杉が巻き込まれる事件を描いたもので、百舌シリーズお馴染みの人々も登場するが、まあ緊張感はあまりない、むしろ喜劇風のドラマになっている。
大杉は、百舌シリーズと同様、警察を辞職した私立探偵であるが、自宅兼事務所は乱れ放題、家族関係でも妻と離婚協議の最中である。その彼のところに、売り出し中の女優(飯島直子)とそのマネージャー(片桐はいり)が訪れ、女優のボディーガードを引受けて欲しいと依頼する。大杉は、女優の色気に惹かれ、一つ返事でそれを引受けるが、それによりヤクザ世界が絡んだ恐喝・狙撃事件に巻き込まれることになる。ただ話の展開にはそれほど意外性はなく、むしろ大杉と彼の相棒の駐在所警察官(伊藤淳史)というデコボコ・コンビを核にしたコメディー風に進み(「半沢直樹」物で香川が見せた、「歌舞伎」風の大袈裟な表情が、「百舌」シリーズよりも強調されているような印象である)、そして解決する。最後の場面で、飯島直子演じる女優にすっぽかされた居酒屋で、真木よう子演じる美希と二人酒に興じるところだけが、少し「百舌」の香りを感じさせることになる。新進女優役の飯島直子も、久し振りに演技をしているところを見たが、まあ役柄がそうなのであるが、やや鼻について、あまり感情移入できなかったのであった。まあ、シリーズ2作目の「砕かれた過去」も、あまり期待しないで観ることにしよう。
鑑賞日:2021年6月19日