友へ チング
監督:クァク・キョンテク
友人より薦められた韓国映画。脚本・監督は、クァク・キョンテクという、私は初めて聞く名前。韓国では2001年の公開時に、「シュリ」等が持っていた興行記録を、その半数にも満たない日数で塗り替えたという作品だそうである。原題の「チング」は、映画では「親旧」という日本語に訳されているが、簡単に言えば「友情」といったところだろうか。
物語りは、1976年、4人の中学生仲間の日常から始まる。4人は、リーダー的な存在であるが親はヤクザのジュンソク(俳優:ユ・オソン。以下同様)、転校生で葬儀屋の親を持つドンス(チャン・ドンゴン)、優等生のサンテク(ソ・テファ)、そしてお調子者のジュンホ(チョン・ウンテク)。私自身の幼年期を思わせる当時の韓国の街並みや海岸での彼ら悪ガキの生態が、懐かしさを感じさせる。
その彼らが再び高校で再会し、背伸びした友情を育むが、映画館での乱闘事件等を受け、ジュンソクとドンスが退学処分となり、その後二人はヤクザの世界に足を踏み入れていくことになる。それでも、一時ヤク中毒で廃人のようになっているジュンソクをサンテクやジュンホが見舞ったり、ジュンソクのヤクザの父親の葬儀では、ドンスが葬儀を取り仕切る等、友情は続いている。しかし、1990年に入るとジュンソクの集団とドンスの集団の抗争が激化し、挙句の果て、ドンスは刺殺されてしまう。その事件の公判で、サンテクは、ジュンソクに対し弁護の施策を伝えるが、結局ジュンソクは、ドンス殺害は自分が指示をしたと犯行を認めることになる。監獄に面会に来たサンテクに対し、ジュンソクは、犯行を認めたのはドンスに謝りたかったからだ、と呟くのである。
といった韓国的友情物語であるが、正直のところ、育ちが異なる4人の友情、特にヤクザとなった男たちと堅気の男の友情がこうした形で続くことの違和感が最後まで残ることになってしまった。また1970年代から90年代にかけては、先に観た韓国映画で、1980年の光州事件を取上げた「タクシー運転手」や1987年の民主化運動を扱った「ある闘いの真実」のように、韓国は、政治・社会的に激動の時代であったにも関わらず、そうした時代背景はほとんど取り上げられていない。もちろん見方によっては、そうした政治要素を除いた友情を描いたところが、この作品が韓国で受けた理由であったともいえるが、私にとってはやや物足りない部分であった。
この映画には、「チング 永遠の絆」と題された2013年公開の続編もある。一応これにも目は通しておこうとは考えているが、感じとしては、本作と同様、友情と言う名でのヤクザ抗争映画の様である。まあそれであれば、やはり昔見た日本の「仁義なき戦い」の方が、背景を含め容易に感情移入ができて、楽しめるような気がしている。
2021年11月9日 記