猟奇的な彼女
監督:カク・ジェヨン
先日観た韓国映画「ベルリン・ファイル」に出演していた女優チョン・ジヒョンが結構気に入ったので、彼女が主演しているこの作品も観てみた。監督はカク・ジェヨン。彼も私は初めて聞く名前である。2001年の作品で、公開当時はそれなりに話題になったと記憶している。
しかし、映画を観始めて直ぐに、これは全くの外れ映画で、時間を無駄にしたという想いを抱くことになった。ボーイフレンド役のチャ・テヒョンは、いかにも弱気で軽薄な若者で、そして何よりも彼を振り回すチョン・ジヒョンが、「ベルリン・ファイル」での「大人の女」というよりは、(恋人の死という心の傷を負っているという設定であるが・・)ただの子供っぽい我がまま娘という感じで、何でこんな二人の非現実的でつまらない恋愛沙汰に付き合わされるのか、という気持ちが、ほとんど全編に渡り続くことになったのである。
ところが、その印象は、最後の15―20分程度で、大きく覆されることになった。彼らが、2年後に会おう、と言って田舎の大きな一本松(?)の根元に埋めた、手紙を入れたタイムカプセルの約束の時には女は現れず、しかしその1年後に女がそこを訪れた際には、そこにいた老人から、その木が雷で倒壊し、それを知った若者が似た木を植え替えたという話を聞くことになる。また男は、その後街中で、走り始めた地下鉄で女を見かけるが、電車は走り去る。しかし最後、冒頭で男が訪ねることになっていた、しかし電車で女と出会い、そこへ行くことが出来なかった息子を亡くした叔母を訪ねた時に、そこに居合わせた女と再会することになるのである。
なるほど、このトリックが、この作品を、つまらない若い男女の恋愛映画から、話題となった作品に昇華させたのか、と妙に納得することになった。映画は最後まで観てみるものである。
しかし、やはり、チョン・ジヒョンは「ベルリン・ファイル」(制作:2013年)の方が魅力的であった。彼女は1981年生まれであるので、この作品の時は20歳くらい、そして「ベルリン・ファイル」の時は32歳くらいということで、若く子供っぽい彼女よりも、30代に入った彼女の方が、私にとっては好ましいということになる。そんなことで、「ベルリン・ファイル」の2年後、2015年制作の彼女の出演映画「暗殺」も観ておかなければならないだろう。
鑑賞日:2021年12月15日