テロ、ライブ
監督:キム・ビョンウ
またレンタルショップで適当に見繕った韓国映画。2013年制作作品で、監督はキム・ビョンウ。主演のテレビ・ニュースキャスター、ユン・ヨンファをハ・ジョンウ、彼の上司チャ報道局長をイ・ギュンヨン、大統領府のテロ対策女性主任パクをチョン・ヘジンといった俳優が演じているが、監督を含めて私が知った名前はない。
キャスターのユンは、5年ほどテレビのニュース番組を担当していたが、現在は左遷されラジオのキャスターとなり、またテレビ局記者の妻にも離婚されている。視聴者からの意見を生で放送するその彼の番組に、当日のテーマは政府の税制改定問題であったにも関わらず、「橋に爆弾を仕掛けた」という電話が入る。当然当初はイタズラ電話と見做されるが、放送局のビルから見下ろせる麻浦大橋で大爆発が起こったことから、ユンは、そのテロ予告が真実であることが分かり、その犯人からの電話を、テレビでの実況に切り替える。彼は、それが自分のテレビ・キャスター復帰の絶好の機会と考え、また彼の上司であるチャ報道局長も、自分の出世のために利用しようとそれに介入するのである。
パク・ノジュと名乗る犯人は、まず高額な出演料を要求。それが実行されない場合は他局に出演すると言われたことから、局長もそれを支払うことを了解し、犯人の電話が実況で流されることになる。ユンの問いに答える形で、犯人は「爆破した麻浦大橋は俺が建てた。そして2年前、重要な国際会議の準備で補修されたその橋の手抜き工事で3人が事故死したが、政府はその責任を曖昧にして犠牲者に対する補償も謝罪もなかった」として、今回のテロは、それについての大統領の謝罪を要求するものであると告げる。また犯人は、ユンの装着しているイヤホンには爆弾が仕掛けられており、自分の指示に従わなければ、それを爆発させると脅す。また一部が爆破され寸断された橋の現場には、ユンの別れた妻が記者として派遣され、事故の実況を行っている。こうして、犯人とユン、そしてそれに介入するチャ局長や、犯人の要求に対応するため大統領府から放送局に派遣されたテロ対策のパク主任を絡めた駆け引きが展開されていく。
ユンの放送室とその裏の指令室、そして事故現場の橋の映像だけで映画は展開していく。犯人の意向を受け、大統領の番組出演と謝罪を要求するユンに対し、チャ局長は視聴率を上げることしか頭にない。駆け付けたパク主任も、ユンに対し、犯人の逮捕だけのために時間稼ぎをすることを指示。また大統領に代わって放送に登場した警察庁長官は、犯人に対し、「テロには屈しない。自首しろ」というだけで興奮し、イヤホンの爆発で命を落とすことになる。現場では、爆発で寸断された橋に引っかかっていた車が川に転落し、男性が死亡している。そして橋のもう片方が爆破され、別れた妻の記者を含め、取り残された人々が孤立している。橋は傾き始め、時間との勝負が続く。大統領の番組出演と謝罪に拘るユンと、犯人逮捕を優先するパク主任の言い合い。しかし、結局橋は崩落し、別れた妻も死亡、犯人がいるとされた隣のビルも爆破され、傾いたビルは放送局のビルに向かい崩れ落ちることになる。そして、崩壊しつつある放送局のビルに現れた犯人とユンの最後の戦い。2年前の建設作業員の事故死と犯人の関係が明らかとなり、そして犯人の若者は警察に射殺される。それを見たユンは、犯人が残した爆破起動装置で最後の決断をするのである。
偶々選んだ割には見応えのある作品であった。最後に、若者であることが分かる爆弾犯人が、橋やビルを大破させる爆弾を作成し仕掛けたり、キャスターのイヤホンに爆弾を仕掛けるといった現実性のない設定は突っ込みどころであるが、それを除けばスピーディーな展開と、夫々の登場人物が自分の都合だけを考えてやり合っていく展開は、それなりに緊張感があり飽きさせない。そして当初は、事件を自分のキャリアの復活に利用と考えながらも、最後は犯人に同情し、重大な決断を行っていく主人公のキャスターを演じたハ・ジョンウの真剣な演技もなかなか見応えがあった。大統領府のパク主任や別れた妻の記者等、女優陣にはあまり魅力的な登場人物はいなかったが、結構楽しむことができた作品であった。
鑑賞日:2022年12月4日