アジア・ドイツ読書日誌と
ロンドン・東京・フランクフルト・シンガポール音楽日誌
映画日誌
アジア映画
薔薇の秘密
監督:イ・ギョンミ 
 これもレンタルショップで適当に見繕った韓国映画。2015年制作の作品で、監督はイ・ギョンミ。主演の政治家の妻、ヨノンをソン・イェジン、政治家を目指す彼女の夫ジョンチャンをキム・ジョヒョクといった俳優が演じているが、前作同様、監督を含めて私が知った名前はない。

 韓国で総選挙が予定され、そのデサン市という街の選挙区で、元テレビキャスターの若いキム・ジョンチャンが立候補し、「世代交代」と唱えながら、現職であるノ・ジェスンに挑んでいる。しかし、そのまさに選挙の公示日に、夫婦の一人娘であるミンジンが失踪する。警察は、この日に管内で起きた事件は、地元民ではない男である被害者がまだ特定できていない交通事故死事件だけであるとし、また夫のジョンチャンも、選挙に影響すると言いながら、真剣に探そうとしない。ヨノンが、このではない全羅道という(恐らく革新系が強い地域)の出身であることを隠していたということも、関係者が彼女と距離を置く理由になっている。そんな中、ヨノンは、自分で娘の残されたメモや携帯のチェック、あるいは関係者への聞き込みを始めるのである。

 その中では、ミンジンの女子高での親友で、パフォーマンス・バンドを組んで一緒に街頭などで演奏を行っていたチェ・ミオク(彼女の父親は、今回の選挙活動での夫の運転手である)が、当日ミンジンと一緒だったことが分かる。しかし彼女は迎えに来た白い車に乗って去っていった、と証言している。

 そうこうしている内に、選挙活動は進み、まずは、娘が失踪しているにも関わらず無関心に運動を進めるジョンチャンの支持率が下がるが、そこでミンジンが死体となって見つかることで、一転同情票が増えて有利に進み、警察も態度を一転し捜査記録などを出し始める。そして捜査は、娘の親友であったミオクの靴からミンジンの血痕が採取されたことから、ヨノンや警察は彼女が容疑者ではないかと疑うが、彼女の父親は「絶対にそんなことはしない」と主張している。

 娘の携帯メールに残っていたアドレスから、彼女が通っていた中学の女教師と面談し、ある時期からミンジンとミオクの成績が急に良くなっているが、それはその教師が試験問題を事前に二人に送っていたことを突き止める。しかし、その教師は、二人が可愛いので助けてあげたが、回答は自分たちで考えたのだ、と言っている。迷宮入りしそうになる中、狂気にも近い執念で、二人の高校生の演奏練習室を訪れたヨノンは、そこで多額の現金を見つける。そしてその現金が、実はヨノンが面会した中学の女教師の不倫現場を撮影した動画を使い、彼女を脅したことで、その教師から受け取ったものであること、そしてミンジンは、その教師が雇った殺人犯により殺されたこと、そして更には、その殺人犯が、ミオクが運転する車で跳ねられて死んだことが明らかになっていく。そして最後は、映像に映っているその女教師の不倫相手は、実は身近にいたことが判明する。選挙でジョンチャンが勝利したその夜、ヨノンは、彼に対する復讐に出るのである。

 次第に明らかになる関係者の意外な繋がりが、この作品のミソであるが、主演のソン・イェジンー日本人にも多くいる外見の女優であるーは、呪い師との祈祷や、最後の復讐を含めて、娘を失った母親の狂乱振りを熱演している。そして彼女を取り巻く夫を含めた男たちの勝手な振舞いや、権力になびく警察の態度等も皮肉な視点で描いているのが印象的である。ただ、広告性の二人の娘が、不倫映像で大金を巻き上げるという発想はやや現実味が薄く、また少女の死体や復讐場面での拷問など、映像的に気持ちの悪いカットも結構多く、観終わった際の気分はあまり良くない。やはり映画は、観終わった後のある種の爽快感をもたらしてくれるものが、現在の私の期待にあっている。そんなこともあり、今年はまった韓国映画は、年内はこれで打ち止めにしようと思う。

鑑賞日:2022年12月18日