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監督:キム・ソンフン 
 偶々立ち寄った川崎駅前のレンタル店から借りた何枚かのDVDの一つ。久し振りの韓国映画である。2018年2月公開のアクション映画で、監督はキム・ソンフン、主演の南北朝鮮の刑事を、ヒョンビン(北)とユ・ヘジン(南)が演じている。ユ・ヘジンは、俳優らしからぬ容姿とコミカルな演技でどこかで観た記憶はあるが、監督や二枚目俳優のヒョンビンは初めて聞く名前である。

 北朝鮮で、偽札印刷グループの摘発に際して、捜査機関内で裏切りがあり、ヒョンビン演じる刑事チョルリョンは、助かったものの妻や仲間を殺される。裏切ったのはやはり特殊捜査担当のチャ・ギソン。彼は韓国に密航し、強奪した偽札印刷原版等を、南のヤクザ・グループに高値で売りつける目算である。北での精巧な偽札印刷が世界に知られると大きなスキャンダルになることから、この原版を取り戻し、ギソンを逮捕するため、チョルリョンが指名される。そして政府ベースで北から南に「共同捜査」の申し入れがあり、北の外交団に交じって南に入ったチョルリョンに対し、南の警察は、うだつの上がらない「ダメ刑事」ジンテ(ユ・ハジン)を相方として指名。そしてこのジンテとチョルリョンのコンビによる「共同捜査」が始められる。ただチョルリョンは、捜査の本当の目的は明らかにせず、ジンテも北の社会をバカにしながら、上司からは、チョルリョンを捜査から遠ざけるよう指示されている。そうしたお互いの疑心暗鬼の中、チョルリョンも勝手に動き、ギソンが手下を殺したり、ヤクザの集会場で乱闘を繰り広げたりしている。またジンテは、チョルリョンの行動を監視するため、彼を家に泊まらせ、家族に紹介したりしているが、二枚目の彼に、同居する義理の妹が想いを寄せるなど、まあどうでもよい場面が続く。

 しかし、後半、ギソンの売り込みが、南のヤクザ・グループの拒絶にあい、ギソンによるヤクザ殺戮から、チョルリョンの現場侵入とギソンとの戦いに入ると、そのアクションを含めて結構面白くなる。南の司令部は、ジンテに対しギソンを殺すことなく逮捕しろと指示するが、チョルリョンは、ギソンの裏切りの際に、同僚のみならず自分の妻も殺されたことから、ギソンへの復讐を心に誓っている。しかし、二人の言い合いからギソンを逃すと、今度はギソンが、ジンテの家族を拉致し、偽札印刷の原版を返すよう脅迫。原版を取り戻していたチョルリョンも、ジンテの家族を助けるためにそれをもって指定の港に赴き、そこでギソン対チョルリョン・ジンテの最後の戦いが繰り広げられる。そして1年後のピョンヤンで、二人は今度は北での「共同捜査」で再会したという締めになるのである。

 南に逃げ込んだ北の犯人に対し、南北警察による「共同捜査」が行われるという、現実にはほとんどあり得ない事態を基に、そこでの北の二枚目刑事と南の三枚目刑事がコンビを組み、当初の相互不信にも関わらず、次第に心を通わせていく、という、ある意味お決まりの展開で、それはやや興覚めではある。この映画が韓国で公開時に結構ヒットしたという理由は、何によるのか?恐らくは、南北に別れてはいるが、双方同じ民族という意識が、こうした物語を生み出したということは言えるだろう。イデオロギーは違うがいつかは統一され、同じ民族が普通に交流できる日が来てほしい、という韓国人の気持ちをくすぐった作品ということなのだろう。一度観たら記憶に残る三枚目のユ・ヘジンに対し、俳優ヒョンビンは、典型的な二枚目で確かに恰好良くアクションでも頑張っていた。それなりに人気俳優でその他の作品でも活躍しているのだろう(と書いて後でネットを見ていたら、彼は大ヒット「愛の不時着」の主演俳優であった!このドラマは私はまだ観ていないので知らなかった)。

 尚2022年には、この続編も制作されているということである。レンタルにはまだ早いだろうが、出てきたら観ることになるのだろう。

鑑賞日:2024年8月19日