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キル・リスト
監督:ベン・ウィートリー 
 大失敗である。フォーサイス原作小説と同名の映画をネットで見つけ、以前に読んだ原作を改めて読んだ後、この映像を注文で取り寄せた。しかし、観始めるや否や、これがフォーサイスの作品とは全く異なることに気が付いた。それから慌ててネットでこの映画の解説を見て、改めて、フォーサイスの同盟小説とは別の作品であることを確認することになった。たいへんな失望であったが、取り合えず、それはそれで、この2011年制作のイギリス映画を観ることになった。監督は、ベン・ウィートリー、主人公の殺し屋コンビ、ジェイとガルを、夫々ニール・マスケルとマイケル・スマイリーという俳優が演じているが、全て私は初めて聞く名前である。

 映画は、英国の片田舎で、ジェイが、妻と7歳くらいの息子と暮らす自宅での生活から始まる。そこで、既にフォーサイスの作品ではないことが分かり、がっかりするが、取り合えず観続けることにする。ジェイは妻から、長く仕事をしていないと非難されており、夫婦関係は険悪な関係になっているようであるが、取り合えず息子に生活の糧を見出している。

 彼の家を友人のガルが、恋人の女と共に訪れ、夕食を共にするが、そこでジェイと妻が激しい喧嘩を起こし、夕食会を台無しにする。大人しい外見のジェイであるが、すぐ激高する性格であることが分かる。そこで、ガルが、ジェイに新たな仕事の提案をする。そこで初めて彼ら二人が軍隊上がりで、北アイルランドや、ウクライナのキエフ(失敗した経験として語られているが、現在注目の地であるこの地での戦闘がどのようなものであったのかは不明である)等で戦闘に参加した後、殺し屋として金を稼いできたことが明かされる。そして、ジェイの現在の姿に懸念を感じたガルは、新たな仕事として依頼者の老人と接触。彼から提示された「キル・リスト」に従って、二人による新たな一連の殺しが始まるのである。

 こうして、まずは教会の牧師、続けて変態趣味の図書館司書が、彼らにより殺され(一部の拷問・殺人シーンは見るに絶えないものである)、死体は証拠隠滅のため焼却処分されていくが、最後のターゲットである国会議員(MP)の殺人実行にあたり、映画の雰囲気は一変する。

 郊外のマナーハウスで一人暮らしをしている議員の邸宅の庭では、オカルト集団が奇妙な仮面をつけて、生贄の女の処刑行事を行っている。そこで、議員を射殺した彼らは、そこに集まっていたオカルト集団に追われることになり、逃亡過程でまずガルが死に、ジェイも拘束される。解放のためか、そこで彼も仮面をつけ、別の相手と闘うことになるが、最後に殺したその相手は彼の妻であることが判明する。そのオカルト集団には、殺人の依頼者である老人や、ガルがジェイの家に連れてきた恋人の女等も含まれ、彼の闘いを眺めていたのである。

 ということで、フォーサイスの世界とは全く異なる映画で、最後は一部早送りで観ることになった。英国で、こうした半分オカルト的な映画が制作されているというのも驚きであったが、こうした趣味の映画は今後二度と観ることはないだろう。全くの失望に終わった同名タイトルの別映画であった。

鑑賞日:2022年5月24日