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許されざる者
監督:クリント・イーストウッド 
 クリント・イーストウッド監督シリーズの第5弾は、1992年と、やや古い作品で、こちらも監督・主演共イーストウッド。他に、保安官役のジーン・ハックマンや、殺しの相棒役のモーガン・フリーマン、あるいは英国人賞金稼ぎのリチャード・ハリスといった、私でも知っている有名俳優が出演しているが、正直、やはり私には西部劇はピンとこないということが分かった作品であった。

 舞台は、1880年代のワイオミング州。ビッグウイスキーという開拓地の娼館で、娼婦がカウボーイ2名に暴行され、顔を含む全身を傷つけられる。保安官が、カウボーイ達に、その経営者へ馬を7頭差し出すことで事件を解決したことに不満を持った娼婦たちは、金は十分にないにもかかわらず、1000ドルの懸賞金を付けて、暴力を振るった男二人への報復を表明する。

 かつて無法者として名前を馳せたウイリアム・マニーは、若い妻クローディアのお蔭で酒も殺しも止めたが、その妻は3年前の1878年に29歳で病死し、今は小さな男の子と女の子の二人の子供たちと、豚の飼育をしながら貧しい生活をしている。その若く美しい妻が、何故マニーのような極悪非道な男と結婚したかは、娘の親を含め、誰もが不思議に思っているとされている。

 そのマニーのもとに、彼の荒くれ者時代の話を聞いた若い賞金稼ぎの男キッドが現れ、二人の男を殺し、1000ドルをせしめる賞金稼ぎの話を持ち掛ける。最初は断るマニーであるが、子供たちの成長のための金が必要であることを考えその話に乗り、かつての盟友ネッド・ローガン(モーガン・フリーマン)も相棒に加え、3人で殺しを行う開拓地に向かうことになる。

 その開拓地では、街を無法者から守るために、保安官のリトル・ビル・タゲット(ジーン・ハックマン)が厳しい警備体制をひいている。英国人の賞金稼ぎイングリッシュ・ボブ(リチャード・ハリス)が、自分の自伝を執筆するための物書きまで引き連れて街に入ろうとするが、リトルに摘発され、銃を取上げられ暴行・監禁された挙句、街から追い出されている。

 そんな中、街に入った3人は、先ずマニーが、街の酒場で雨に濡れた旅から発熱している中、リトルの尋問と暴行を受ける。その間、上階にある娼館に出かけた他の二人は、懸賞金を前借りして遊ぶが、階下の騒ぎを聞いて辛うじて窓から逃げ出す。そして三人は、彼らが自分たちの仇をうってくれる男たちであることを知った女たちの助けで、彼女たちが町はずれに持っている小屋に匿われる。生死の淵を彷徨ったマニーであるが、全身を傷つけられた娼婦の介抱で、マニーは回復。そして3人で、まずは郊外の砂漠地帯で一人のカウボーイを殺すことになる。その後、ネッドは「もう抜ける」と言い残して二人のもとを去る。マニーとキッドは、二人目の男を殺し、娼婦から賞金を受け取るが、そこで、別れたネッドが保安官たちに捕まり、拷問の末死亡し、街に晒されていることが告げられる。それを聞いたマニーは、街に取って返し、保安官らがマニーらの追跡の打合せをしている場で、娼館の経営者や保安官その他を撃ち殺すのである。

 それから数年後、クローディアの母親が、彼女が埋葬されているマニーの農場を訪れるが、そこにはマニーや子供たちの姿はなかった。彼女は、マニーが西海岸で成功したという噂さを聴くことになる。彼女は、相変わらず、何で自分の娘が、こんな乱暴な無法者と結婚したのかが分からないままであった、というルビと共に映画が終わることになる。

 無法者だったマニーが、熱にうなされた中で、かつて自分が殺した男たちの亡霊や幻想に襲われたり、またキッドは、初めは「自分は今まで5人殺した」というが、実際には今回の殺人が初めてで、「もう二度と殺しはしない」と呟く等、西部の荒くれ者たちが、単純な殺人者ではなかったことも暗示されている。恐らくそうした過去の殺人への悔恨を抱えた者たちの話ということで、この映画のタイトルが「許されざる者」となっているのであろう。しかし、それでも、懸賞金を受け取りながらも、相棒をなぶり殺しにされたことを知ったマニーが、街に取って返し、その報復を行うところなど、やはり「西部劇」である。そして、そうした世界は、私から見ると「古臭さ」を感じるが、それは私が、日本の時代劇が苦手なのと同じ感覚なのだろうと感じている。彼の監督・主演作品の次は、また現代に移ることにする。

鑑賞日:2022年6月20日