9デイズ
監督:ジョエル・シューマッカー
新聞で見た、キューバ危機を扱った「13デイズ」を探しにレンタルショップに行ったところ、この作品は見つからず替わりにこちらを手にすることになった。「13デイズ」のような実話ではない娯楽フィクションである。2002年公開の米国映画で、監督はジョエル・シューマッカー、主演はアンソニー・ホプキンスとクリス・ロックの二人である。ネット解説によると、制作にあたってはCIAも協力していたということである。
チェコはプラハで、CIAのエージェントであるオークス(A.ホプキンス)とケヴィン・ポープ(クリス・ロック)が、ロシア・マフィアと思しき組織が持つアタッシュケース型の小型核爆弾を20百万ドルで買い取る取引を行い、1百万ドルの手付を払い、現物の受け渡しは10日後、として別れるが、そこからの帰途、別のテロリスト・グループに襲われ、ケヴィンが殺されるところから映画が始まる。殺されたケヴィンは、ロシア・マフィアとの強い関係を築き、ようやく取引が完了するところまできたが、その爆弾を狙う別のテロリスト集団に襲われ殺されたということである。
そこで画面は跳び、ニューヨークはマンハッタンで、賭けチェスをやりながらダフ屋やクラブDJで生活しているもう一人の黒人ジェイク(クリス・ロックの二役)が登場する。彼はケヴィンの双子の兄弟で、ケヴィンと瓜二つであるが、性格はいい加減で、恋人のジュリーも彼に愛想をつかし、シアトルでの新しい仕事があるということで別れ話を持ち掛けている。CIA本部での議論を経て、そんなジェイクにオークスが接近し、9日後に迫ったロシア・マフィアとの最終取引のために、ジェイクを訓練し、殺されたケヴィンの替わりに、この小型核爆弾の取引に向かわせる、という展開になる。
与太者であるジェイクが、オークスの訓練により一人前になり、その過程で様々な困難を乗り越えて任務を遂行し、最後はジュリーと結ばれるという現実離れした話であるが、エンターテイメント映画としては楽しく観ることができる。特に、カレル橋やプラハ城を等、学生時代にカフカの諸作品や「プラハの春」で接し、ドイツから一度訪れたプラハの風景は懐かしく眺めることになった。また、派手なアクションや、テロリストグループに奪われた小型核爆弾の起爆装置にジェイクの網膜スキャンが入れられていたことから、テロリストグループが、ニューヨーク中枢部に爆弾をセットした後、ジュリーを拉致しジェイクをおびき寄せ、それが最後の戦いになる結末は、十分予想されたものの、能天気に楽しむことができる。一人二役を演じたクリス・ロックという黒人俳優は初めて見る顔であったが、A.ホプキンスは、いつもの見慣れた演技。その他のCIA要員は、如何にも米国人エリート、マフィアグループは如何にもそうした風貌であり、典型的な米国産娯楽映画であった。因みに、今別の「一卵性双生児」が登場する小説を読んでいる。「一卵性双生児」流行りの今日この頃というところである。
ということで、猛暑の中、連日のテニスと飲み会で疲れた一週間の身体を癒すには格好の娯楽作品であった。
鑑賞日:2023年8月6日