アジア・ドイツ読書日誌と
ロンドン・東京・フランクフルト・シンガポール音楽日誌
映画日誌
序文
序文
 
 今回のHP改訂に併せ、新たに設定したコラムがこの映画評である。映画は、多くの人々と同様、私が幼少期から接してきた娯楽の一つであるが、他方で、友人にも多いこの分野のマニアに比較すれば、私が見た映画の数は限られているし、またその多くは「娯楽映画」であるのが実態である。

 しかし、そうした中でも、歴史的な大作や小劇場系の印象深い作品のいくつかには大きな感動を抱いたものであり、そうした作品については、「読書日誌」や「音楽日誌」と同様に、鑑賞後の評を書き貯めてきた。今回、ここに掲載したのは、そうした映画評の一端である。

 私の映画歴を振り返ると、所謂小劇場系の映画を見始めたのは、大学時代の岩波ホールが始めであったような記憶がある。しかしより意識的には、80年代にロンドンで生活を始め、そこでサウス・バンクにあるNational Film Theatreで時折開催されるインド映画祭やユダヤ映画祭といった企画で、日本ではあまり触れることのない作品に接することができたことで、関心の幅が広がることになった。特に観客が感動した映画には、終わった際、コンサートのように会場が拍手で包まれるというのも、日本では体験したことのない風景であった。こうしてロンドンからの帰国後の日本でも、小劇場系の作品を時折鑑賞すると共に、他の評と同様、ワープロの入手により、映画評も時折残すようになっていったのである。

 しかしドイツに赴任した頃から、今度は家族構成の変化もあり、映画館に足を通うことが少なくなった。それでもドイツからの帰国後は、レンタル・ビデオの普及により、娯楽映画のみならず、ミニ・シアター系の作品も気軽に自宅で見ることができるようになった。特にドイツ時代、多くの劇場映画が昔の日本でのTVでの映画放映と同様に、ドイツ語に吹き替えられている、といった言葉の問題もあり「シンドラーのリスト」を除けばほとんど見ることのなかったこうした重めのドイツ関係の映画を意識的に鑑賞し、評を書き綴ってきた。そんなこともあり、今回の新コラムは、まず最近に見たドイツ映画評から掲載を始めることにした。その他残っている過去の素材についても、準備が出来次第掲載していく予定である。

 繰り返しになるが、2008年6月からシンガポールで生活を始め、今度はアジア映画への関心が強まっていくのを感じている。しかし、ここでも娯楽映画であればともかく、英語+中国語サブタイトルが一般的なこの地での劇場映画は、内容を理解し、評を書くには、相当の集中力が必要である。最近は、日本への帰国時に、日本語サブタイトルのDVDを見ることが多くなっているが、今後は何とか当地固有の作品を当地で鑑賞した評も増やしていきたいと考えている。それまでに若干の時間を頂くことをお許し頂きたい。

2009年9月