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Singapore Women’s Tennis Exhibition 観戦記(写真付)
2011年12月17日 
 12月16日から18日の3日間、シンガポール・インドア・スタジアムで、女子プロテニス選手によるエグジビション・マッチが開催された。

 シンガポールでのテニス人気は今一である。少なくとも私が3年半前にこちらに着任してから、WTAあるいはLWTAの公式戦がこの国で行われたということは聞いた事がない。また以前に、Kallangという地域にあるテニス・クラブでプレイした際に、そこの一つのコートで偶々男子プロの下部の公式戦、という試合が行われており、無名の選手同士の試合を、数十名の観客に混じり20分ほど見たことがある。確かに我々の素人テニスに比べればプレイは素晴らしかったが、ライン・ジャッジもいない、我々の試合に毛が生えた程度のアレンジであり、かつて英国でウインブルドンに親しんだ身からすると、いとも寂しいプロの試合という感は否めなかった。

 そんなシンガポールで、珍しくそれなりの世界ランキングにいる女子プロテニス・プレーヤーによるエクジビション・マッチが行われるということで発売と同時に中日の土曜日の準決勝のチケットを入手した。偶々同日の夜、以前から予約していたミュージカルもあることから、どうしようかと一瞬迷ったが、別にテニスは集中して見る必要もなく、席でのんびりも出来るだろうということで進めることにした。今回の出場者については、事前の発表では別の選手の名前も挙がっていたが、最終的なメンバーとその世界ランキングは以下のとおりとなった。金曜日の準々決勝は、ランクの下の4人が競い、その勝者二人が、土曜日にランクが上の二人と対戦。その結果で、最終日に決勝と三位決定戦が行われるというプログラムである。

Samantha Stosur (6)
Agnieszka Radwanska (8)
Peng Shuai (15)
Flavia Pennetta (20)
Daniela Hantuchova (24) 
Anabel Medina Garrigues (27)

 初日の後の土曜日の新聞情報によると、当地でこうした女子テニスのトップ・プレーヤーが試合をするのは、4年振りであるということなので、確かに私が来てからは初めてである。前回は2007年、マリア・シャラポアが当地でエグジビション・マッチを行ったが、この時は、彼女の視覚的な魅力もあり、最も安いチケットでS$80(今回はS$35)、それでもインドア・スタジアムには約9300人の観客が集まったという。しかし、今回のメンバーは彼女ほどの人気はないことから、試合の数週間前、私の自宅近所のショッピング・センターでプロモーションのパンフレットが配られ、それによると特定の週末にこのチケットを購入すると15%のディスカウントがあるということであった。早々に買った私は馬鹿を見ると共に、集客が進んでいないことが分かった。実際初日の金曜日は新聞によると観客は500人だけであったという。但し、観客側としては、客が少ないのは良いことである。

 ということで、12月17日(土)、午前中に友人とのテニスを終えた後、軽く昼食を済ませ、同行者の運転する車で、開始の午後1時前にインドア・スタジアムに到着した。

 ロックのコンサートで何度も来ている場所であるが、テニスのセッティングにすると、何故か相当狭く感じる。私の席は、正面入り口から入り左側、コートを真横から見る位置である。観客数は、週末でもあり初日の金曜日よりは多いと思われるが、恐らく1000人前後といった感じ。私のサイドは、選手が休息するベンチを正面から見ることが出来るので、それでもまだそこそこ人が入っているが、反対側はガラガラである。天井に、スコアを示す表示があり、四方から見ることが出来る。それによると、この日の第一試合はポーランドのラドヴァンスカと中国のペンの対戦である。

 1時丁度に試合開始のアナウンスが行われ、その紹介で両選手が入場、10分程度の練習から試合に入る。スリムなラドヴァンスカに対し、ペンは結構がっしりした体格である。データによると、身長は夫々172、173cmということなので、二人とも私よりも背が高い。

 試合は、今期China Openを制するなど、成長著しい22歳のラドヴァンスカが、25歳のペンを圧倒し、1時間程度のゲームで勝利した。しかし久々に見るプロ選手のテクニックは双方とも見事で、特に激しいラリーでも息を切らさずラインギリギリを狙っていくショットは見ごたえがあった。エグジビションなので、チャレンジはなく、また賞金もないので選手もそれほど本気ではないと思われるが、それでも、例えばちょっとでもボールがサービス・ライン内で浮くと確実に決めるのはさすがプロの技術であった。

(試合前の記念撮影)


(ラドヴァンスカの勝利インタビュー)


 30分ほどの休憩の後、第二試合が始まる。今年の全米を制し、今回の出場者の中で最もランクの高いストーサーと、これまで9つのシングルス・タイトルを獲得しているものの、どちらかと言うとダブルスが得意(今年の全豪女子ダブルス優勝)であるペンネッタの対戦は、第一試合以上に一方的かと予想された。後方の席がガラガラだったので、まずはコートの全体を見張らせる上の席に移り、第一セットを観戦した。細身のペンネッタに対し筋肉質のストーサーはやや身長が低いように見えるが、二人とも172cmである。因みに、今回は初日に負けてしまったため見ることのできなかったハンチュコバが181cmと今回の参加選手の中ではずば抜けて高い。

 実際開始直後は、ストーサーの強いサーブやダウン・ザ・ライン等のギリギリのストロークーが面白いように決まり、最初のブレイクはストーサーが奪った。彼女が無表情で淡々とプレーするのに対して、ペンネッタはイタリア人らしく、厳しいショットが来ると叫び声を上げたり、自分が外したボールが返ってくると足で蹴ったりと感情を表に出している。しかし後半から流れが変わり、今度はペンネッタのペースになる。ダブルスの専門家らしく、ネット・プレイでのポイントは明らかにストーサーよりも多い。ブレイク・バックした後、第12ゲームでストーサーのサーブを再度ブレイクし、第一セットはペンネッタが取ることになった。

(後方席から)


(ストーサー)


(ペンネッタ)


 それ以降は、再び前の席に戻り観戦したが、第二セットは幾つかブレイクの応酬はあったが、結局タイ・ブレイクになり、そこでストーサーが一矢を報いる。しかし、第三セットに入ると再び流れがペンネッタになり、結局このセットを6−2で奪い、ペンネッタが格上のストーサーを破ることになった。2時間21分の熱戦で、思いがけない展開でもあり、途中からはいつストーサーが本気になるかという期待も含めて緊張で目が離せなくなった。試合終了後のインタビューが行われる中、次の予定も迫っていたこともあり、早めに会場を後にしたが、その際に聞こえたアナウンスによると、その日の夜、私も頻繁に使っているクラーク・キーで今回の選手が出席するディナーレセプションもあるとのことであった。ただいずれにしろ私は行けないので、料金等の詳細は聞き流した。
 
 今回のエグジビション・マッチの結果は、以下のとおりであった。

12月16日(金)準々決勝(観客:公表500人)

Pennetta bt Hantuchova :7−6(7−3)、1−6、6−1
Peng bt Garrigues :6−2、6−3

12月17日(土)準決勝(観客:1000人位?)

Radwanska bt Peng :6−3、6−1
Pennetta bt Stosur :7−5、6−7(4−7)、6−2

12月18日(日)決勝 (観客:公表4000人)

決勝 Pennetta bt Radwanska :6−4、7−5
3位決定戦 Stosur bt Peng : 2−6、6−4、6−4

 試合後の日曜日の新聞記事では、選手は頑張ってプレイしたものの、やはり丁度当地で学校が休暇に入っている時期の企画でもあり、集客が寂しく盛り上がりに欠けたというコメントが掲載されていた。それでも主催者側からの、今後、改めてこうしたエグジビション・マッチ、あるいは出来れば公式戦をシンガポールで開催したい、といったコメントも聞かれたという。今回の企画は、それでも私のような当地で暇を持て余しているテニス好きにとっては、空いた観客席で、久々に一流選手のプレイを身近で見られるということで、なかなか楽しめたイベントであった。ここでのテニス仲間は、公式戦の観戦ということであると、1月の全豪オープンのためオーストラリアに行ったり、あるいは公式戦が行われるクアラルンプールに行ったりしているが、私はテニスを見るためだけにそこまでする気にはなれない。しかしもしこれで公式戦がシンガポールで行われるのであれば、会場への往復の気楽さもあり、喜んで行くことになるだろう。私の滞在中にそれが実現できることを是非期待したいと思う。

2011年12月20日 記