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Crash of Continents - Singapore Men’s Tennis (写真付)
2012年11月24日 
 11月24日(土)、25日(日)の二日間、「Crash of Continents」と題された男子プロテニス選手による試合が開催された。

 丁度1年前の昨年12月、同じ会場で女子プロテニス選手のエクジビション・マッチが開催された(別掲)。試合自体はなかなか面白かったが、少なくとも私が観戦した土曜日の試合では、観客は少なく、会場には結構空席が目立つ状態で、シンガポールでのテニス人気が今ひとつ盛り上がっていないことを感じさせられた。しかし、今回の試合は、アジア、北米、南米、欧州から、夫々世界ランキングで一桁から20位前半までの4人が、S$520,000の賞金をかけて戦う試合ということで、それなりの真剣勝負が期待された。特に今年10月に日本で行われた楽天オープンで、WTAの公式戦2勝目を上げた、世界ランキングも現在19位となっている錦織圭が、アジア代表として初めてシンガポールでプレーするということもあり、当地日本人の観戦も多くなることが予想されたことから、発売後早々に私もチケットを入手することになった。他の選手は、北米がS.クエリー(世界ランク:22位、当初予定ではM.フィッシュ(同:27位)であったが、直前に変更となった)、南米がJ.モナコ(同:12位)、欧州がJ.ティプサラビッチ(同:9位)という三人である。

 しかし、オンラインでチケット(アリーナ:S$138)を申し込んだ後に判明したのは、今回のチケットは24日(土)、25日(日)二日間の通し券だけであるが、25日(日)は以前から申し込んでいた中国語検定の受験日で、午後の時間帯も全く重なることに気がついた。もちろん検定試験の前日の土曜日もどうか、ということではあるが、試験はいずれにしろ泥縄で準備しても意味がないことから良しとし、翌日曜日の券は誰かに譲渡することにした。

 当日が近づくにつれ、このイベントのアレンジにつき、いろいろ新たな情報が入ってきた。前述した北米代表の変更に加え、25日(日)には、男子4人の試合とは別に、昨年の女子の試合にも参加したチェコのD.ハンチュコバと中国のP.スイのエグジビション・マッチ及び、英国の若手女性歌手Leona Lewisのコンサートも行われるということが伝わってきた。重ね重ね今回、日曜日に行けないことは残念であった。

 こうして24日(土)、開始時間の午後2時少し前に会場に到着することになった。会場入り口を入ったところで行列ができていたので、先頭を覗いてみると、J.モナコがサインに応じていた。たいした列ではなかったことから、それでは並ぼうかなと思ったところ、会場係に、今締め切ったところだ、と止められてしまった。しょうがないので、モナコの写真だけとって、席に着いた。今回も私の席は、前回の女子テニスと時と同様、正面入り口から入り左側、コートを真横から見る位置であるが、前回よりもコートに近い。、但し、選手が休息するベンチは、今回は私のいる側に設置されていることから、休憩中の選手の正面は見ることができない。天井の前回と違う位置に、スコアを示す表示が示されている。開始時間前は、まだ観客数は少なく、前回の女子の試合と同じ程度の入りである。

(サインに応じるモナコ)



 配布されていたプログラムを確認すると、この土曜日は、四試合が予定されている。翌日曜日は、女子の一試合と歌手の余興のほかに男子二試合。当初想定していたのは、土曜日に4人が一試合ずつやり、翌日曜日に優勝決定戦と三位決定戦をやるのだろうということであったが、同土曜日だけで、夫々二試合やる様である。そうすると、日曜日の二試合も加えると、各人が三試合、総当りで勝者を決めるということなのだろうか。いずれにしろ選手にとって、3セット・マッチではあっても一日二試合やるというのは結構な負担なのではないかという懸念と、一試合二時間弱とすると、四試合目が終わるのは相当時間が遅くなるということではないか?翌日の試験が少し頭をよぎったところで、最初の試合が2時20分にアナウンスされ、セルビアのティプサラビッチと米国のクエリーが入場する。

 テレビではよく見ている二人であるが、もちろん実物を見るのは初めてである。特にクエリーは、見るからに大きく、プログラムで確認すると身長198センチ、ということであった。長身の人に良くあるように、やや猫背で歩いているところなどを見ると、あまり運動神経が優れているという感じはしないが、それが大違いであることは、一旦試合が始まると明らかになる。ティプサラビッチは、テレビでよく見るように、色が入ったスポーツ用の眼鏡がトレードマークである。

 試合は、クエリーの長身からのサーブをティプサラビッチが懸命に拾い、ストロークに持ち込むという展開で、ストロークになるとランクが上のティプサラビッチが明らかに優位である。第一セットは、第二ゲームをティプサラビッチがブレークしたが、その後クエリーもブレーク・バックし、結局タイブレークの末7:6でティプサラビッチが取る。第二セットは1ブレークで、ティプサラビッチが6:3で取り、その結果彼が2:0で勝利した。1時間20分ほどの試合であった。

 午後4時開始の第二試合は、いよいよ錦織の登場である。相手は、同じフロリダのテニス学校で練習相手でもあると言われている、同じ年齢のモナコ。この時間になると、会場は錦織目当ての日本人も増えたのだろう、先日の女子の試合よりも観客は増えた感じである。「アジア代表」というアナウンスを受け、錦織が入場。帽子はかぶっていないことから、あまり梳かされていないややとんがった髪の毛が気になる。

 試合はいきなり第一ゲームで錦織のサーブがブレークされるスタートで、先が思いやられたが、こちらも錦織がブレークバックし、結局タイ・ブレークにもつれ込んだ。タイ・ブレークも互角でスタートしたが、途中錦織のサーブで、サービス・ライン内に弾んだイージーボールのスマッシュを錦織が外したのをきっかけに、モナコが7:4で取り、第一セットは7:6モナコ。途中で、錦織のロブを、モナコが股下ショットで返し、その後の錦織のドロップ・ショットにも対応しポイントをあげると大喝采である。それに呼応したように、次のゲームでは、明らかに錦織がモナコに同じようなロブを上げるように仕向け、それを同じような股下ショットで返す、という遊びがあった。これはその後のドロップショットへの対応で、モナコのポイントとなったが、こちらも大喝采であった。第二セットは、そんなこともあり錦織はやや集中力が途切れたのか、まず1ブレークを許し、最後も自分のサービスをブレークされ、6:2でモナコが勝利した。こちらも第一試合と同様、約1時間20分の試合であった。

 錦織の武器は、やはりストロークで、特にロング・ラリーになると錦織が打勝つケースが多かったが、この試合は第一サーブがなかなか入らず、第二サーブを押し込まれてポイントを失うことが多かった。対するモナコは、それほど強烈ではないにしろ、第一サーブを確実に入れることで、サービス・キープができたという印象である。

 この日はあと2試合。そして次の6時からの試合は、最初の二試合の敗者同士の戦いになるということなので、錦織が続けて登場する。翌日の試験を考えると、あと二試合見るのはややつらいので、錦織の試合だけ見ることにし、その間にスタジアム隣にあるショッピング・センターのフードコートで、チキンライスの夕食を駆け込み、6時過ぎに再びスタジアムに戻った。

 会場では、一般参加者によるサーブでの的当てゲームなどが行われており、結局錦織の第二試合が始まったのは6時半であった。対戦相手はS.クエール。試合前に二人が並ぶと、178センチの錦織は、198センチのクエールの肩までしかないといった感じで、対格差は、明らかである。

 しかし、この試合は錦織の第一サーブが高い確率で入り始め、サーブをキープできるようになってきた。そして10月の日本での楽天オープンを制した時もそうであったと聞いている、相手の第二サーブをバックでストレートのダウン・ザ・ラインに打ち返すリターン・エースが何本も決まる。この結果第一セットは錦織が6:3で取り、また第二セットも6:4で奪い、この試合に勝利することになった。第二セット最後の、サービス・フォア・マッチの前に錦織が、トレーナーを呼び、若干の時間をかけて右手首にテーピングを始めた。またこれは彼にはよくある怪我で、試合は最後のところでリタイア負けかな、と心配していたが、そのサービス・ゲームを無事キープし、勝利したのであった。終了は、7時40分終了。1時間10分の試合であった。

(錦織の試合と終了後のインタビュー)







 この日同行した友人は最後の試合も見るということだったので、錦織の勝者インタビューを聞きながら、私は席を立ち出口に向かう。途中、翌日曜日分として使える私のチケットを別の友人に渡し、いつものとおり地下鉄で家に着いたのは8時過ぎであった。一休みしてから、テニスのことは忘れ、翌日の中国語試験に向けて頭を切り替えたのであった。

 週明け、いつものように、当地新聞に、今回の試合のレビューが掲載された(11月26日The Straits Times)。

 これによると、翌日曜日は、結局錦織が、土曜日の怪我で欠場となったことから、このイベントの賞金S$520,000は、欧州代表のティプサラビッチが獲得することになった、とされている(ということは、私の見なかった土曜日の第三試合、ティプサラビッチ対モナコ戦は、ティプサラビッチが勝ったということだろうか?

 日曜日の錦織の欠場については、「土曜日は学校があり見に来ることができなかったのに、彼が日曜日に欠場したのはとっても残念だった」という当地の日本人中学生のコメントが紹介されているが、それを除くと、日曜日のプログラムも面白かったようである。唯一の男子の試合となったモナコ対クエリー戦は、モナコが勝利したものの、6−1、1−6とフルセットに持ち込まれ、第三ゲームのタイブレークも10−7という接戦であったとのこと。特にクエリーは、公式戦で連続サービス・エースの記録をもっているということ(2007年、同じ米国のJ.ブレーク戦で、10連続エース)で、この日は土曜日以上にその長身からのサーブが冴え、この日の7614人の観客を湧かせたとされている。

 それに先立って行われた女子のP.スイとD.ハンチュコバのエギジビションは、スイが6−4、6−3で勝利。その後行われた、英国の歌手Leona Lewisの45分のショウは、テニスに加えて観客を楽しませたようである。実際、日曜日も観戦した友人は、このコンサートの時が観客が最も多かったのではないか、と言っていたくらいである。

 記事は、クエリー、モナコ、ティプサラビッチなどの、この試合をエンジョイしたし、是非将来はシンガポールが公式戦開催して欲しい、そしてその時は我々は喜んで参加する、といったコメントを掲載している。昨年の女子テニスの時にも同じことを書いたが、私のシンガポール滞在中にそれが実現できることを願いたいと思う。

2012年11月30日 記