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WTA Finals Singapore(女子テニス)観戦記
2014年10月22日 
 サッカーに続き、10月22日(水)、女子テニスの公式戦を、ここシンガポールで観戦することになった。

 かつて、2011年12月、この日と同じIndoor Stadiumで、女子テニスのエグジビション・マッチを、また2012年11月には、日本から錦織も参戦したCrash of Continentsと題された男子テニスを見る機会があった(それぞれ別掲)。後者は、一応S$520,000という賞金はかかっていたが、ATPのポイントにはならない試合であり、錦織も、2日目の日曜日には、足の故障でリタイアするなど、やはり真剣さという点では、見劣りするものがあった。これに対して、今回のWTA Finals Singaporeは、2014年の公式戦最後の試合で、年間のベスト8が、一週間総当りで対戦するという、気合の入った試合である。かつて、上記の試合を見た際に、「近いうちにシンガポールで公式戦を見ることができれば」と書いた、その希望が、まずは女子テニスで早々と実現することになったのである。

 この試合のチケット自体は、結構早く売り出されていたが、まず、この総当たり戦に参加できるトップ8が決まらない時点であったことから、しばらくは購入を躊躇することになった。そして最終的に参加の8人は決まったものの、10月20日(月)から26日(日)まで行われる昼の部(シングルス1試合、ダブルス1試合)と夜の部(シングルス2試合、ダブルス1試合)の組合せが、シングルスの場合は直前の18日(土)まで決まらないという。週末に行われる準決勝、決勝は値段も高くなることから、行くとすれば、その週の祭日である22日(水)かな、と考えながらも、なかなかチケットを買う気にならなかった。結局、テニス仲間から声が掛かり、彼にまとめて取ってもらうということで、22日(水)の昼間、午後1時半からのセッション(S$53.90)を確保したのだった。

 ということで、今回のメンバーは、厳しい年間の試合を勝ち抜いた以下の選手である。

Serena Williams(米国)/ Maria Sharapova(ロシア)/ Simona Halep(ルーマニア)/ Petra Kvitova(チェコ)/ Eugenie Bouchard(カナダ)/ Agnieska Radwanska(ポーランド)/ Caroline Wosniacki(デンマーク)/ Ana Ivanovic(セルビア)

 直前のランキングではLi Naが、6位に入っていたものの、9月に引退を表明したことから、このメンバーからは外れ、WTA Ambassador の名誉職で参加することになった。恐らく繰上げでAna Ivanovic が入ったということだろうが、メンバーとしては十分である。

 今回のチケット購入時の問題は、前述のとおり、4人づつ2組に分かれて総当りで戦う予選は、どのスロットにどの組合せが入るか、直前の抽選まで分からないということ。やはり希望としては、シャラポアやイワノビッチを見たいが、セリーナはいらないかな、と考えていたところ、まさに当日のシングルスは、セリーナ対シモーナ・ハレップの対戦となった。

 ややその組合せにがっかりしていたこともあろうか、前日深夜1時半に、ラオス・ビエンチャン出張から帰宅し、当日午前中は会社に出ていたこともあり、帰宅して軽い昼食を取った後、前夜のシャラポワ対ボスニアッキの3時間に及ぶフル・セットのTV録画を見ながら、ついうとうとしてしまった。はっと気がついたら1時過ぎ。慌てて着替えて、降り始めた雨の中を車で出たところ、何と10分もかからず会場である Sports Hubb の駐車場に着いてしまった。開始前ということで、予想に反し、会場の Indoor Stadium の入り口には長蛇の列ができていたが、取り敢えずダブルスの開始直前に、会場に入ることが出来た。まずは一番奥の通路から試合を眺め、最初の3ゲームが終わったところで、中に入ることを許され、席で、既に来ていた友人たちと合流した。

 最初のダブルスは、Ekaterina Makarova / Elena Vesnina 対 Anastasia Rodionova / Alla Kudryavtsevaという、ロシア人同士のペアによる対戦である。ランクは上で、度々テレビでも同じコンビの試合を見ているMakarova / Vesnina組が第一セットを取ったが、第二セットはRodionova / Kudryavtseva 組が取り返した。これは長丁場になるな、ということで、気分転換を兼ね、当日のパンフレット探しに会場外に出て、飲み物等を買った上で席に戻ると、既に試合が終わっていた。結局ダブルスの予選は、第三セットはやらず、10ポイントのタイ・ブレーク制だったそうで、私が席を外している間に早々と決着がついたようである。予想に反し、Rodionova / Kudryavtseva組の勝利ということであったが、タイ・ブレークを見逃したのはやや残念であった。

 休憩をはさみ、午後3時、この日のハイライトであるセリーナ・ウイリアムス対シモーナ・ハレップのシングルスが開始された。まさに「ゴリラ」のような風貌のセリーナに対し、最近成長著しいとはいえ、小柄なシモーナとの戦いは、どう見てもセリーナの圧勝という予想で、組み合わせが決まった時点で、当方は、どの程度セリーナが圧勝するか、あるいはその男のようなサービスのスピードが実感できれば良いな、というのが当日の関心であった。因みに、最近、ロシア人のIOC委員がテレビで、ビーナス、セリーナのウイリアムズ姉妹を「ウイリアムズ兄弟」と呼び、WTAから25000ドルの罰金と、WTAに関する1年間の活動停止処分を受けた、との報道があったが、公開の場で言うのはともかく、実感としては十分共感できるコメントである。

 ところが、いざ試合が始まると、いきなりセリーナのサービス・ゲームをシモーナがブレーク。セリーナはダブル・フォルトも多く、何よりもラリーになるとシモーナが圧倒的に優位に立ち、攻めるシモーナと守るセリーナという構図になり、それをシモーナが制していく。結局第一セットは、6:0で、シモーナが先取。更に、第二セットになれば、セリーナも気合を入れるだろうという予想に反し、セリーナは2ゲームをキープするのがやっとで、結局6:0、6:2のストレート、僅か1時間ちょっとの試合で、シモーナが勝利することになった。シモーナの勝利者インタビューを聴きながら、我々は会場を後にしたが、新聞等によると、セリーナのこのスコアでの敗戦は、彼女の過去16年のキャリアではなかった最大の惨敗であったということである。余談であるが、第二セット、シモーナ4:1でのインターバルで、我々の前にいた小さな女の子の手作りカードが会場カメラに移り、女の子の真後ろにいた私の顔もスクリーンに大写しになったのであった(実際のTVの録画放送等では見ることはできなかったが)。

 その後、準決勝の土曜日から、私自身はシンガポール外に出てしまったため、週末に行われたこのトーナメントの続きは、同時間で追いかけることは出来なかったが、結局26日(日)の決勝は、同じセリーナ・ウイリアムス対シモーナ・ハラップの対戦となり、今度はセリーナが、6:3、6:0で勝利し、この日の雪辱を果たすことになった。セリーナは、この大会3連覇(モニカ・セレシュ以来)、また改変前の同種の試合を含めると5度目の年間最終戦勝利(ステフィ・グラフ以来)を達成すると共に、年間ランキング1位も3年連続で確保することになった。セリーナの獲得賞金はS$2.6百万、シモーナはUS$971千ということである(新聞記事で、表示が、S$とUS$と異なっている理由は不明)。因みに、シモーナは、今回この大会初出場であったが、初出場で決勝まで進んだのは、この大会44年の歴史で僅か8人目ということである。またダブルスでは、Cara Black(ジンバブエ)と Sania Mirza(インド)ペアが、昨年の覇者である Peng Shuai(中国)と Hsieh Su-wei(台湾)ペアを6:1、6:0で破って優勝した。

 この日は祭日ということもあり、会場はほぼ満員で、かつての親善試合で空席が目立ったのに比べて、興行的には成功であったようだ(公式発表によると、10日間の観客総数は129千人)。それでも時間の余裕がある友人は、その前後の試合も当日券で見に行けたようで、数日観戦すれば、ほとんどの出場者の試合を見ることができるということであった。他方で、このWTA Finalは、F1と同様、シンガポールがこれから5年開催する権利を得た、ということなので、来年以降も見ることができる。その意味で、今回見られなかったプレーヤーは、もちろん来年のランキングがどうなっているかによるが、少なくとも来年のこの時点でのトップ・プレーヤーは見ることができる。F1と違って、一回見ればそれで良い、というものでもないので、来年に楽しみをとっておくのも悪くない。

 続いて今度は、男子のATP Finalの出場権をかけた戦いが、現在行われており、錦織が、残された4人の枠に入れるかが日本では話題になっている。次のシンガポールのこの分野での課題は、ATPの公式戦をここで開催することができるかどうかであるが、これも最近のシンガポール政府のエンターテーメント招致に関する積極姿勢を勘案すると、意外と早く実現するかもしれない、と期待しているのである。

2014年10月27日  記